RAIN

街には雨が降り続いていた。
…酸性雨。体に害を及ぼす酸が含まれる雨。
約千年前、人は化学の発達によりこの星ー地球-が蝕まれていることを知った。
何とかこの星を元に戻そうとしたが、約千年たった今ー西暦2998年ー、今だにこの雨はやまない………。
それどころかもっとひどい雨が降ることもあった。
………その雨の中1人の青年が町の片隅に立ち尽くしていた。
青年は雨に濡れてずぶぬれ、顔色は悪く、今すぐにでも倒れそうな状態。
だが、彼は立ってひたすら街を見つめていた。
――――――――妹がいなくなった街を。


………どれぐらい立っているのか分からなくなっていた。そんな時―――――
「…おい!」
青年はハッとなって我に返った。
いつの間にか自分の目の前に小型車が止まっている。
運転席の窓が開いていてそこからなぜか雨なのにサングラスを掛けた青年より年上らしい男が彼を見ていた。
「……………なんですか?」
蚊の鳴くような声で青年は答える。
「…君さぁ、よくこんな雨の中に傘を差さずに立っているな。この雨がお肌に悪いことを知っているだろう?」
「………」
「体に悪いの!」
男はそう言うと運転席から降り、外に出てきた。
そして、ジッと青年を見つめ、青年の手を掴みそのまま男は青年を後部座席に押し込んだ。
「おー濡れちまう!」
男はあわてて運転席に戻る。
席に戻った男はちらりと後ろを見た。
…後部座席の青年は下を向いたまま座り込んでいた。
「………何で」
男に気づいた青年はまた蚊の鳴くような声で問う。
「………何で俺を乗せたんですか?」
「…何でって………助けてくれって顔してたから」
「…え?」
「……子犬がさ、捨てられてて助けてくれって顔をこっちを見てる。…助けなきゃかわいそうだろ?」
「………」
「…俺は佐伯トオル。この街で探偵をやってる。君は?どこから来た!?」
「……………麻宮コウ。ネオコウベから来ました」
「ネオコウベ?都会じゃん!…ということは仕事探しじゃない…か」
「………………妹が行方不明になったんです、この街で。それで……」
「…で、探しに来たが手立てがない。どうしようもなく突っ立っていた…と」
「………」
「…このままじゃ風邪を引く。暖まりに行こう!!」
「…え?」
「今ね、俺の事務所改装中なの。だから別のところに行こう!!」
トオルはニコニコしながらギアを入れた。

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